「被害者ぶるのはやめて」と妻に言われる。黙る・泣く自分は操作しているのか

妻が怒ると、黙るか泣くかしてしまう。そして「被害者ぶるな」と言われる

夫婦の間で話し合いをしているとき、妻が怒り出すと、言葉が出なくなって黙り込んでしまう。 あるいは、情けないと思いながらも、目元に涙が浮かんでしまったり、あからさまに肩を落として落ち込んでしまったりする。

そして妻から、冷たいトーンでこう言われます。 「被害者ぶるのやめてくれる?」

私は、妻が怒っているときにこの言葉をよく言われます。 喧嘩で黙り込んでしまう仕組みについては別の記事でも書きましたが、私は夫婦の対立場面になると言葉を失う「逃避」の癖があります。さらに黙るだけでなく、泣く、落ち込むといった反応が重なることで、妻の苛立ちをさらに強めていました。

「そんなつもりはないのに、じゃあどうすればいいんだ」と困惑し、さらに固まってしまう。この言葉を言われると、どう言い訳をしても自分が悪者になっていくような、強い行き止まり感があります。

自分は操作なんてしていない。でも

「被害者ぶる」と言われると、強い反発を覚えます。 なぜなら、自分はわざと泣いているわけでも、意図的に落ち込んで妻を悪者に仕立て上げようとしているわけでもないからです。

言葉に詰まるのも、涙が出るのも、ショックで落ち込んでしまうのも、すべて自分の中でコントロールできない反射的な反応です。決して、妻を「加害者」にして自分を「かわいそうな被害者」に見せるための作戦(=操作)ではありません。

しかし、妻の視点に立ってみると、全く違う景色が見えてきます。

妻が怒って正当な主張をしようとしているときに、夫が黙ったり、泣いたり、深く落ち込んだりする。それを見た妻は、「私が夫をいじめている」「私が一方的に責め立てる加害者のようだ」というプレッシャーを勝手に背負わされることになります。 その結果、妻は本当に言いたかった主張を引っ込めざるを得なくなったり、感情の矛先を失ったりします。

つまり、夫の側には全くその意図がなくても、その黙る・泣くという反応は、結果的に「妻の口を塞ぎ、自分の非をうやむやにする」という強力な圧力として機能してしまっています。だからこそ妻は「私の正当な怒りを、自分の涙や沈黙で封じるのはやめてくれ」という意味を込めて、「被害者ぶるな」と怒るのです。

「被害者ぶる」と言われる側の二重拘束(どう反応しても不正解)

この問題が厄介なのは、言われた夫の側に逃げ道がない点にあります。 どう反応しても不正解になる、いわゆる二重拘束の状態だからです。

つらくて黙ったり泣いたりすれば、「被害者ぶっている」「メソメソして逃げている」と責められます。 かといって、責められても平然と、あるいは理路整然と聞き流そうとすれば、「反省の態度が見られない」「本当に薄情な人だ」と怒られます。

泣いても平然としていても責められてしまうわけですが、夫婦関係の診断(四騎士)のなかでも、相手の指摘に対して「言い分はわかるが、そんな言い方をされると傷つく」という態度を示すことは、時として「自己弁護」や「逃避」として相手をさらに苛立たせるとされています。

どう立ち回っても悪い方に解釈されてしまう状況のなかで、夫はただただ固まるしかなくなってしまいます。

どっちが被害者かの裁判を、降りる

この行き詰まりを解決するために必要なのは、「どちらが被害者で、どちらが加害者か」というジャッジ自体をやめることです。 以前、妻へのイライラについての記事で「脳内裁判をやめる」という考え方を書きましたが、これを対立場面での自分の反応にも応用します。

妻が「被害者ぶるな」と言ってきたとき、夫の脳内では「いや、自分は操作していない、むしろ責められている自分の方が被害者だ」という無意識の反論が始まります。 しかし、この脳内裁判を続けている限り、どちらがより傷ついているかの競い合いにしかなりません。

「自分は操作の意図で泣いたわけではない」という事実と、「自分の涙が妻に圧力をかけている」という事実は、両方とも真実で、どちらかが100%悪いわけではありません。そのうえで「自分は操作していないが、この反応は妻を追い詰めているのだな」と認めて、どちらが被害者かというスコアボードから降りることが、悪循環を止める最初のステップです。

かつて関係が冷え切って家庭内別居になりかけた経験がありますが、あのときもお互いが「自分のほうが傷ついている」と主張し合っていました。その裁判を降りない限り、冷え切った空気は変わりません。

反応は消せないが、「攻撃じゃない」だけは先に言える

言葉に詰まることや、涙が出てしまうこと自体は、意志の力で今すぐ止められるものではありません。 そのため、「泣かない完璧な夫」を目指す必要はありません。

しかし、自分の反応が妻に誤解されている状態(=妻を責めようとしている)は、言葉で防げます。 反射的に涙が出たり、落ち込んで黙りそうになったりした瞬間、 「泣いている(黙っている)けれど、あなたを責めたり、話を遮ったりするつもりはない」 ということだけを先に宣言します。

「攻撃の意図はない」とあらかじめ開示しておくことで、妻が感じる「悪者にされている」というプレッシャーを減らせます。反応そのものは消せなくても、その反応が持つ意味の誤読は防げます。

最後に、もし「被害者ぶるな」という言葉が、普段の人格否定や無視といった常態的な攻撃の流れのなかで発せられており、精神的にひどくすり減っている場合は、それは話し合いの態度の問題ではなくモラハラの領域かもしれません。 逆に、自分の涙や落ち込みを、相手の口を塞ぐための便利な防具として意図的に使っている自覚があるなら、それもまた健全ではありません。 つらい状態が長く続いているのであれば、お互いのためにカウンセラーなどの第三者の力を借りて整理することを勧めます。

まずは感情を完全にコントロールしようと焦らず、「あなたの攻撃が目的ではない」という意図だけを伝えてみてください。そこから二重拘束の空気を変えていけます。